セキュリティラベリング制度(JC-STAR)開始
「セキュリティラベリング制度(JC-STAR)」が開始されました。
情報処理推進機構(IPA)
「セキュリティラベリング制度(JC-STAR)」★1適合ラベルの交付を開始
https://www.ipa.go.jp/pressrelease/2025/press20250521.html
この制度は、IoT製品(監視カメラ、センサー等)などのセキュリティを評価し、セキュリティの度合いに応じて、ラベル(シール)を貼ることを認める制度です。
これにより、消費者はそのラベルの有無によって、製品のセキュリティに対する客観的な評価を確認することができるようになります。
といっても、よく分かりませんよね。
ひとつ、例を挙げて考えてみましょう。
みなさんは、「WiFi」ってご存じですか?
まあ、多くの方はご存じでしょうし、何なら今「WiFi」経由でこのページを見ている方もいらっしゃるでしょう。
今や常識の一部となっている「WiFi」ですが、実は元となる技術が発表された当時は、あまり注目されていませんでした。
スマホなどが無く、今ほど無線通信が必要とされていなかったというのもありますが、『IEEE 802.11a/b対応』などと言われても、消費者にとっては何のこっちゃ分からなかったのです。
ただ、これは別に消費者が悪いわけではありませんし、技術者が悪いわけでもありません。
問題なのは、消費者と技術者の間を取り持つ、『普及者』の存在がなかったことです。
そこで作られたのが、今では常識となっている「WiFi」です。
時は1999年。
無線LANの市場を広げたい関係者たちは、無線LAN用の規格としては普及していた「IEEE 802.11b」という規格を、「WiFi」と呼ぶことにしました。
それに続けて、「WiFi Certified」という認定シールを作ります。
これは、『このシールが貼られている製品(ルータとか)は、WiFiが使えますよ』という証になっていました。
このようにすることで、『IEEE 802.11a/b対応』のような規格名が分からない一般人でも、『あ、「WiFi」使えるんだ』とシンプルに理解できるようになりました。
結果として、この作戦は大いに成功し、今では『誰もが簡単に使える無線通信技術』としての地位を確立したわけです。
話を JC-STAR に戻しましょう。
先にも述べたように、JC-STAR というのは、IoT製品などのセキュリティを評価する仕組みです。
これに、今説明した「WiFi」の例を当てはめると、次のようなことが言えます。
『IoT製品などについて、ちゃんとセキュリティを確保した製品が消費者に分かりやすくなってほしい。そして、セキュリティが確保されているものを選んで買ってほしい』
これは、近年の IoT 製品などを狙ったサイバー攻撃への対抗策という一面もあると思います。
ですがそもそも、セキュリティに対する客観的で統一的な指標はありませんでしたから、『同じ基準によって等しく評価される』という目的もあるでしょう。
いずれにしても、この制度がうまく回り始めれば、消費者は製品のセキュリティ基準を、認定シールを見ることで確認できるわけです。
そうなると、家電量販店などに行って、防犯用カメラを買う際に、チラッとパッケージの裏を見るようになるわけです。
そして、そこに JC-STAR のシールがあれば、『星印が2個あるから安心だなー』と考えて購入していくわけです。
それが、JC-STAR の描く未来だと思います。
(※2025年7月現在、JC-STAR の認定は星印1個のみです)
そんなこんなで、JC-STAR 制度が開始されたというお話でした。
私は、そこまで IoT 製品に関わることはないのですが、もし何かを買う際には、チェックするようにしてみたいと思います。
それでは、JC-STAR のマークは Energy Star のオマージュだと思う、山本慎一郎でした。