Shinichiro Yamamoto

山本 慎一郎

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DX動向2024が公開されました

先日、IPAから「DX動向2024」という資料が公開されました。
DXの成果などについて、短観が示されています。

IPA 「DX動向2024」
https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/dx-trend-2024.html

サマリーによれば、『着実にDXが企業に浸透している』などと評価されています。
実際、資料に記載されたグラフからは、DXに取り組んでいる企業が増えていることが読み取れます。

ですが、私としては、それよりももっと悲観的なデータに着目すべきだと思うのです。

例えば、同資料21ページにある「生成AIの導入状況(従業員規模別)」のグラフを見てみます。
生成AIを『導入している』、『現在、試験利用している』、『利用に向けて検討を進めている』という、前向きなアクションを起こしている企業がどれぐらいあるでしょうか?

従業員規模によって前向きなアクションの比率が大きく異なるグラフ
IPA DX動向2024より 抜粋加工

全体平均こそ45%近くですが、「100人以下」の小規模事業者のグラフを見てください。
3つの回答を合わせても、たった16.8%です。
6社に1社しか、生成AIに対して前向きなアクションをできていないのです。

一方、従業員規模が1001人以上の大企業では、『導入している』という回答だけで32.8%もあります。
従業員の規模、つまり企業の規模によって、これほど大きな開きがあるのです。
これは、生成AIのような効果的なDXの技術が、限定的にしか利用されていないことを示しています。

日本の99%は中小企業です。
1%の大企業だけで活用できたところで、国家的にDXが進むわけがありません。

もうひとつ例を挙げましょう。

今度は同資料31ページにある、DXを推進する人材の「量」と「質」についてです。
こちらもグラフがありますが、従業員の規模ではなく、全体平均の経年変化(2021年度、2022年度、2023年度)と米国(2022年度)との比較になっています。

従業員規模によって前向きなアクションの比率が大きく異なるグラフ
IPA DX動向2024より 抜粋加工

こちらもまあ、目も当てられない状態です。
DXを推進する人材の「量」について、『大幅に不足している』と回答した割合は、2021年度が30.6%、2022年度が49.6%、そして2023年度は62.1%。
大幅に不足していると感じながらも、効果的な対策が打てないままどんどん状況が悪化している様子が見て取れます。

DXを推進する人材の「質」についても同じです。
2021年度が30.5%、2022年度が51.7%、2023年度が58.1%。
悪化の一途を辿っています。

従業員規模によって前向きなアクションの比率が大きく異なるグラフ
IPA DX動向2024より 抜粋加工

さらに悲惨なのは、米国との比較です。
IT分野で進んでいる米国では、人材の「量」が『大幅に不足している』と回答した割合は、わずか3.3%。
「質」についても7.6%で、人材の量も質もある程度充足していることが分かります。

これだけ差をつけられていたら、そりゃあ国としてIT分野で後れを取るのも仕方ないでしょう。
いつからこんなに人材育成が下手な国になってしまったのか。
自身も日本人ながら、哀れみすら覚えます。

そんなわけで、「DX動向2024」を流し読んだ感想としては、やっぱり中小企業、特に小規模事業者では進まないな、というものでした。
そして、その進まないDXを進められる人材も育ってないな、と。

まあ、原材料費の高騰や賃上げ要請なども考えたら、DXなんかに回す原資ありませんよね。
本来は、DXに着手することで生産性が向上して、その余剰金でカバーするのが正しい歴史だったのでしょうが……手遅れですね。

じゃあ、どうやってその手遅れの状況を打破すればいいのか。
小規模事業者では、とにかくまず「お金」なんですよね。

もう一回、DX補助金とか大きめのキャンペーンやってもらえないですかね?
できれば、これが最後のチャンスだぐらいの危機感を与える感じで。
そうすれば、漬物石みたいに微動だにしない小規模企業の経営層にも、訴えかけられる気がするのですが……。

それでは、日本はもうIT発展途上国だろうと思った、山本慎一郎でした。

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